タイの大手通信キャリアAISは2026年5月7日、東南アジア地域で初となる「5G-ADVANCED」サービスを開始したと発表した。複数の周波数帯を統合する5G SA(スタンドアロン) Carrier Aggregation技術を中核に据え、Downlink 3CC+Uplink 2CCの構成で通信速度と応答性を引き上げる。AIによるネットワーク最適化と国際パートナーとの連携で構築し、将来の6G時代への中継技術として位置付ける戦略。
「5G-ADVANCED」とは何か:5G SA Carrier Aggregationの仕組み
「5G-ADVANCED」は、現行の5Gと将来の6Gの中間に位置する規格群の総称で、3GPP(国際移動通信標準化団体)のRelease 18以降で標準化が進む技術仕様。現行5Gの最大の制約だった「単一帯域での容量限界」を、複数の周波数帯を束ねて利用するCarrier Aggregation(CA)で突破する。
AISが導入したのはスタンドアロン(SA)構成の5Gでこの技術を運用するもので、Downlink(基地局→端末)で3つの周波数帯を同時利用する3CC、Uplink(端末→基地局)で2つの周波数帯を同時利用する2CCの組み合わせ。結果として、ダウンロード速度・アップロード速度の双方が、従来5G環境より大きく向上する。
Downlink 3CC + Uplink 2CCで速度向上、AI活用が要
技術の核は「複数電波の束ね方の最適化」にある。AISは複数のミリ波帯・サブ6GHz帯を組み合わせ、ユーザーの位置・端末性能・利用シーンに応じてリアルタイムでCA構成を切り替える。この最適化にAIが活用され、混雑時間帯のスループット低下や移動中のセル切り替えロスを抑える設計となっている。
特にUplink 2CCは産業IoTやライブ配信、リモート診療などでアップロード負荷が大きい用途に直結する。タイの製造業現場、医療機関、メディア企業にとって、ライブ配信や工場のリアルタイム監視で従来課題となっていた「上り帯域の細さ」が緩和される見通し。
6G時代への中継技術、東南アジアで先陣
AISが「東南アジア初」と打ち出した点には戦略的な意味がある。シンガポール、マレーシア、ベトナム、フィリピンなど周辺国の大手キャリアもCarrier Aggregationの試験運用は行ってきたが、商用サービスとして3CC/2CCを実装するのは域内で初。タイのデジタルインフラ競争力を高め、データセンター誘致やデジタル投資の呼び水にする狙いも見える。
6Gは2030年前後の商用化が想定されており、5G-ADVANCEDはその中継技術として位置付けられている。AISの「Partnership + AI + Innovation」3本柱の戦略は、機器ベンダーやチップメーカーとの密接な協業を前提にしており、タイ国内の通信インフラ更新サイクルを早める効果も期待される。
在タイ日本人と日系企業のリモートワーク・IoT利用への影響
在タイ日本人駐在員にとって、この高速化はリモートワーク環境の質的向上に直結する。日本本社とのビデオ会議の安定性、クラウド型業務システムへのレスポンス、4K/8K動画コンテンツの視聴体験が改善する。AISユーザーがメインの場合、対応端末への移行で恩恵を実感しやすい。
日系製造業にとっては、タイ拠点工場のIoT・スマートファクトリー化の選択肢が広がる。これまで光ファイバー中心の設計だった工場通信を、5G-ADVANCEDで補完・移行することで配線コスト削減と柔軟性向上が見込める。バンコク・サムットプラカン・ラヨーンの工業団地での導入事例が、今後の業界注目点となる。