アユタヤ県バンパイン郡で2024年4月に起きた酸をかけた傷害事件の容疑者、スラチャイ(36歳、通称バード)が約2年にわたる逃亡の末、建設現場で逮捕された。逃亡中に身元を隠しながら働いていたところを中央捜査局が追跡して身柄を確保した。
事件の経緯はこうだ。スラチャイは別れた元交際相手の女性の車に合鍵を使って忍び込み、車内で復縁を求めた。女性が拒否して口論になり、女性が助けを求めようと住宅地の入口付近で車を停めた瞬間、スラチャイは女性の頭をつかんで車内に引き戻し、あらかじめバッグに用意していた酸(強酸性の液体)を女性に向けて浴びせた。
女性は頭部、耳、顔、首、胸、背中、両腕、両脚に3度の熱傷(最も深い化学熱傷)を負い、複数の部位で皮膚が壊死するほどの深刻な傷を受けた。酸による熱傷は水や消化器では止められず、即座に大量の水で洗浄することが唯一の応急処置となる。被害女性はその後、複数回の手術と長期にわたる治療を余儀なくされたとされる。
タイでは近年、別れた交際相手への暴力・ストーキング事件が繰り返し問題となっている。「交際相手の拒絶」をきっかけにした凶行は男女問わず被害者を生み出しており、特に酸をかけるという手口は被害者の外見を永久に傷つけることで「支配を示す」という意図を持つケースが多い。国際的にも「アシッドアタック(酸攻撃)」として問題視されており、タイでも処罰の厳格化が求められている。
タイでは傷害罪・殺人未遂罪などが適用される可能性があり、酸を使用した場合は加重事由となる。今回の逮捕により2年以上の時効が迫る前に身柄を確保できたことは、被害者にとって一定の法的正義が実現した形だ。