トラン県で放火と公共物の破壊容疑で追われていた40歳の男性・ナロン(通称チャーンレック)が4月1日、警察によって射殺された。遺体は家族によってワットトゥンワン寺に搬送された。男の母親は涙ながらに「なぜ足を撃って止めることができなかったのか」と訴え、警察の武力行使の正当性に疑問を呈した。
事件の経緯によると、男はコーコー郡クワンプリン村の道路沿いの草、電柱、コンクリートバリケードなど公共物に放火し被害を出した。警察が追跡・包囲したが男が抵抗したとして発砲、死亡に至った。
母親と男の雇用主は、警察が最初から射殺を前提に動いたのではないかという疑念を持っている。「放火という罪に対して命を奪う必要があったのか」「テーザーガン(電気スタン銃)を使えなかったのか」という問いかけは、現場を見ていた地域住民からも出た。男は40歳で地元出身のチャイヤプーム生まれといい、精神的な問題を抱えていた可能性も指摘されている。
タイでは「容疑者が抵抗または逃走した」という理由で警察が発砲するケースが年間数十件規模で発生する。国際人権団体はこうした「法外な処刑」を繰り返し問題視しており、逮捕時の発砲基準の曖昧さと、代替的な拘束手段(テーザーガン・催涙スプレーなど)の普及不足を課題として指摘している。タイ警察は全国的に非致死性武器の配備率が低く、個々の警察官の判断に発砲の是非が委ねられている現状がある。
SNSではこの母親の言葉が広く拡散され、「足を撃てばよかった」という主張への共感と「逃走中の放火犯に過剰配慮は不要」という反論が交錯した。タイ国内でも警察の武力行使をめぐる社会的な議論は根強く続いており、今回の事件はその議論を再燃させた。警察庁はコメントを出しておらず、内部調査が行われるかどうかも明らかにされていない。
