タクシン・チナワット元首相は2026年5月11日、クロンプレム中央刑務所からの釈放が決定し、仮釈放(保護観察)に移行した。服役期間が1年の刑期の3分の2(8カ月)に達したとして、刑務所委員会が仮釈放を承認した。釈放後は4カ月間の保護観察期間を経て完全に自由の身となる。
タクシン氏は2023年8月に15年ぶりに帰国し、最高裁政治犯部が科した懲役1年の刑に服していた(複数の有罪案件を合算して1年に減刑)。高齢(76歳)と健康状態の悪化を理由に、服役のほとんどをクロンプレム刑務所の病棟で過ごしていたと伝えられる。仮釈放にあたっての電子監視装置(EMタグ)の着用については、健康状態・年齢を踏まえて委員会の裁量に委ねられた。
タクシン氏はプームジャイタイ党の創設に関与し、同党は現在のアヌティン政権の与党連合の主要構成政党だ。タクシン氏本人の政治的発言は仮釈放後も法的な制約を受けるが、娘のペートンタン・チナワット元首相(2025年10月に解任)を通じた影響力については引き続き注目が集まる。
タクシン帰国後のタイ政治は「タクシン派の巻き返し」と「反タクシン・軍部保守派」の綱引きが続いている。プームジャイタイ党は農村部・地方票を基盤とし、アヌティン首相体制が2026年時点でも続いている。タクシン氏の動向は次回総選挙(2027年予定)に向けた政治地図に大きな影響を与える可能性がある。
日本ではタクシン氏は「親日的な政治家」として知られた一面もあり、日本タイ経済協力関係では歓迎された存在でもあった。元首相の仮釈放という今回の動きは、タイ政治の複雑さと「法と政治の交差点」を改めて示す出来事だ。