タイのエネルギー省は2026年3月29日、「今夕ディーゼル価格が60バーツ/リットルに引き上げられる」とするSNS上の情報はフェイクニュースだと正式に否定した。ウィーラパット・キアッティフアンフー副事務次官が声明を出した。
フェイクニュースの内容
拡散していたのは「政府内部文書」を引用する体裁の情報で、「3月29日夜からディーゼルが60バーツに上がる」という内容だった。SNSとメッセージアプリを通じて急速に広まり、一部のスタンドではこれを見た消費者が「値上げ前に入れておこう」と駆け込む動きが起きた。
当時の実際のディーゼル価格は33バーツ前後だった。「60バーツ」という数字は実態の約2倍で、仮に本当なら生活コストへの打撃は計り知れない。このため「もし本当なら」という恐怖心が拡散を加速させた。
エネルギー省の否定
副事務次官は「そのような文書は存在しない。価格決定は適切な手続きを経て行われ、突然2倍以上になることはありえない」と述べた。政府は燃料価格の調整を段階的に行う方針で、1度に30バーツ近い値上げは「政治的にも財政的にも不可能だ」とも説明した。
「市民は信頼できるソースからのみ情報を得るよう」と呼びかけるとともに、デジタル警察(CCIB)がフェイクニュースの発信源を追跡していると明かした。
フェイクニュースが生まれた背景
2026年3月の燃料危機は、市民の間に「次はもっと上がる」という不安心理を生んでいた。政府が「市場原理に委ねる」と宣言し、価格の先行きが見えない状況では、極端な情報でも「あり得る話」として受け取られてしまう。
フェイクニュースを故意に流す動機としては、特定のスタンドへの集客(先に入れさせて売り切り)、または単純に不安をあおることを目的とした悪意ある行為が考えられる。
「60バーツ」という数字の意味
2026年3月のタイで60バーツという値段が人々に刺さったのは、「考えうる最悪のシナリオ」を具体的な数字で示していたからだ。実際のディーゼルは33バーツ前後でも、「備蓄している人は有利だ」という心理が買いだめを誘う。
こうしたフェイクニュースが社会不安を増幅させ、本来不足していなかった燃料を「不足している状況」に変えてしまう危険性がある。
