東北部ブリラム県で宝くじの行商販売に従事している人々が、燃料高騰と消費萎縮の二重苦に追い込まれている。バイクで市場や集落を巡回して宝くじを売るこのライフスタイルは、タイの地方経済に根付いた副業・生業だ。しかし2026年春の燃料危機でガソリン代が急増し、同時に客の購買意欲も落ちた。
「1日3枚しか売れない日も」
宝くじ行商人のトーンルアン・チャエームテートさんは語る。「以前は抽選日が近づけば必ず売り切れた。でも今は近くなっても売れ残りが積み上がる。一番ひどい日は3枚しか売れなかった。ご飯代にもならない」
タイの宝くじは1枚80バーツで、政府発行の合法的な商品だ。抽選は月2回(1日と16日)で、1等は600万バーツの課税後賞金。庶民の「小さな夢」として各地で愛されてきた。しかし燃料高が食品・日用品の価格を押し上げ、低所得者は消費の優先順位を変えざるを得なくなった。宝くじは「なくても生きていける」支出として、最初に削られる対象になった。
行商人の構造的な脆弱性
タイの宝くじ販売ライセンスは、障害者や低所得者に優先的に付与される仕組みになっている。身体障害者が宝くじを持ってバイクや車いすで町を回る姿は各地で見られる。彼らにとって宝くじ販売は、他の労働市場に参入しにくい分、代替手段のない生業だ。売れなければ生活が直接崩れる。
燃料高は地方末端まで届く
エネルギー危機は都市部だけの問題ではない。農村部の小商いの水準まで、燃料高の影響は浸透した。バイクで宝くじを売り歩く一人の老人の嘆きは、地方経済の底辺で起きていることを映している。