原油市場ではWTI原油先物が1バレル99.64ドルと、前日比で5.16ドル急騰して取引を終えた。ブレント原油も112.57ドルに上昇し、いずれもここ数年ぶりの高水準だ。背景にはイラン情勢の長期化とホルムズ海峡封鎖への警戒感がある。
WTIが100ドルの大台に近づいたことはタイのエネルギー政策にとっても重大な警戒ポイントだ。タイは原油消費量の約9割を輸入に依存しており、国際価格の上昇は直接国内燃料価格に反映される。2026年3月以降のタイ国内ディーゼル価格は1リットルあたり33〜48バーツ台で乱高下しており、物流・農業・漁業への打撃が続いていた。
市場の懸念はホルムズ海峡の安全保障だ。世界の石油輸送量の約20〜25%が通過するこの海峡が封鎖されると、代替ルートは著しく限られる。サウジアラビアの東西パイプライン(East-West Pipeline)やUAEのアブダビ・ジャバル・アリ間パイプラインはその代替機能を一部担えるが、合計輸送能力は海峡ルートを大幅に下回る。
原油高騰と同時に発表された米国の消費者信頼感指数(3月分)が市場予測を下回ったことで、「インフレ再加速が続けばFedが利下げできない」との観測が強まった。高金利の継続は企業業績や新興国市場への資金流出圧力をも高め、複合的な下押し要因としてダウ平均が大幅に売られる場面もあった。
タイ中央銀行は国際原油価格と国内政策金利のバランスに苦慮している。原油高が続けばインフレが高止まりし、利下げ余地が縮む一方、景気への打撃を緩和するためには利下げも必要という板挟みだ。エネルギー補助金はすでに国家財政の大きな負担となっており、財務省は補助金の段階的縮小の是非を検討している。