タイ・バーツが2026年3月の取引開始時に1ドル=32.98バーツと、前日終値の32.83バーツから0.15バーツ下落して始まった。中東の軍事衝突に起因する原油高騰とリスクオフ心理が世界の新興国通貨を圧迫しており、バーツも例外ではない。外国人投資家はタイ株式と国内債券を同時に売り越しており、バーツへの売り圧力が続いた。
バーツの下落は輸入物価を押し上げる経路でタイ国内の物価上昇に直結する。原油・天然ガスを輸入に頼るタイでは、原油高騰とバーツ安の組み合わせが燃料価格への二重の圧力となる。実際、2026年3月末のディーゼル価格は1リットルあたり33〜48バーツ台で推移しており、燃料高が農業・物流・観光業に幅広く打撃を与えていた。
タイ中央銀行(BOT)の政策金利は2.5%で、2025年末から据え置かれている。米連邦準備制度(Fed)が高金利を維持する中、新興国からの資金流出が続いており、タイ中銀は利上げと経済支援のジレンマに直面している。タイ経済の実質GDP成長率は2025年で2.8%程度と、政府目標の3.5〜4%を下回った(タイ国家経済社会開発委員会)。
外国人投資家のタイ株式売り越し額は2026年3月に累計数百億バーツ規模に達したとされ、タイ証券取引所(SET)の総合指数は年初から5%超下落した。外国人の資金流出は株式市場だけでなく債券市場にも広がり、10年物国債利回りが上昇(価格は低下)している。
バーツ安はインバウンド観光客にとってはタイが相対的に割安になるというプラス面もある。2025〜2026年にかけてタイ観光業は回復基調にあり、円安・バーツ安の組み合わせは日本からの観光客誘致に有利に働いている。タイ観光スポーツ省は2026年の外国人観光客目標を3500万人としており、通貨安によるコスト競争力向上は一定の恩恵をもたらす可能性がある。