ソポン・サーラムヤイ国会議長は3月27日、議員が国会審議に出席する際のドレスコードを緩和する命令に署名した。これまで男性議員に求められてきたスーツ・ネクタイのフォーマルな服装に代わり、タイの伝統布地「パータイ(ผ้าไทย)」を使用した服装や、清潔感のあるカジュアルなシャツでの出席を認める内容だ。
命令の背景には、中東情勢の悪化に伴うタイのエネルギー危機がある。国会議長は命令文の中で「中東の紛争が国内の燃料・エネルギー情勢に深刻な影響を与えており、政府の省エネ政策に国会として協力する必要がある」と説明している。議事堂のエアコン設定温度を緩和し、ネクタイなしでも快適に審議できる環境を整えることで、冷房コストを削減する狙いがある。
タイは年間を通じてバンコクの気温が30度を超える熱帯気候だ。スーツにネクタイを着用して長時間の審議に臨むためには、エアコンをかなり低い温度に設定せざるを得ない。これが議事堂の電気代を押し上げる一因となっており、ドレスコードの緩和は「見えない省エネ」として実効性を持つ措置とも言える。
伝統布地「パータイ」は、タイ各地の特産品として知られる絹や綿の布地を用いたシャツや上着の総称だ。チアンマイのコムパン・ディン柄やコラートの絹柄など地域によって模様が異なり、議員が地元の伝統文化を着ることで地方の手工芸産業の振興にもつながるという見方もある。国会という公式の場でパータイが認められたことは、タイ文化の正式な場への定着を後押しする意義もある。
日本では2005年から「クールビズ」として夏場のノーネクタイ・ノージャケットが官民で広まった。タイ版クールビズとも言えるこの動きが、国会から民間企業へ波及するかどうかが注目される。タイの民間企業では都市部のオフィスで既にカジュアルな服装が普及しているが、公式機関が率先して変えることで、保守的な組織文化を持つ公務員職場への波及効果が期待されている。
なお議員の食事予算の削減も検討されており、国会全体として緊縮モードへの移行が進んでいる状況だ。