タイ南部パンガー県で燃料危機が深刻化している。3月26日時点で県内の多くのガソリンスタンドが閉鎖されており、6バーツの価格引き上げが実施された後でも燃料の供給自体が届かない状況が続いていた。
最も衝撃的だったのは、スタンドの前に車を停めて「燃料を入れるお金がない(ไม่มีเงินเติมน้ำมัน)」と手書きの看板をつけて売りに出している光景だ。車を手放してでも生活費を確保しようとする住民の窮状が目に見える形で現れた。パンガー県はタイ南部の観光県だが、農業・漁業で生計を立てる住民も多く、車なしでは仕事も生活もままならない地域だ。
農業用の水ポンプや漁船の燃料も深刻で、農家や漁師は操業を止めざるをえない状況に追い込まれている。漁業が主要産業の地区では魚の水揚げが止まり、地域の水産加工業にも連鎖的な影響が出始めた。
パンガー県は2004年のインド洋大津波(スマトラ津波)で甚大な被害を受けた地域でもあり、その後もカオラック・カオソックなどのエコツーリズム観光で復興してきた。今回の燃料危機で観光業者も移動コストが急騰し、ツアーの中止・縮小を余儀なくされているケースが出ている。
タイ全土で燃料不足と価格高騰が続く中、地方・農村部ほど打撃が大きい傾向がある。都市部ではデリバリーや公共交通への切り替えが可能だが、車なしでは生活が成り立たない農村部では選択肢が限られる。パンガーの事例はタイ地方部の燃料危機の象徴的な光景として報じられた。