1週間以上下落を続けていたタイの金価格が3月25日に急反転し、1日で2,500バーツ上昇した。タイ金商協会は朝9時7分の時点で一度に2回の価格改定を発表という異例の対応を取り、金地金の買取価格は70,600バーツ、売出価格は70,800バーツとなった(1バーツ重量は約15.2グラム)。装飾品金(純度96.5%)の売出価格は71,600バーツを記録し、71,000バーツの大台を突破した。
反転の背景には国際金融市場の動向がある。前週まではタイの金市場で「パニック売り」が続いていた。中東紛争の先行き不透明感から安全資産である金を手放す動きが加速していたが、逆に地政学的緊張が再び高まったことで「有事の金」として買い戻しが入った。国際的な金相場もニューヨーク市場での急騰を受けてタイ市場に波及した形だ。
タイの金相場は国際価格に加え、バーツの対ドル為替レートが直接影響する。タイ国内では1バーツ重量(約15.2グラム)単位で取引されるため、ドル建てでの国際価格とバーツの変動が同時に影響する。中東情勢の悪化でバーツが弱含めば、ドル建て金価格が変わらなくても国内の金価格は上昇する。
タイでは金は伝統的な資産保全の手段として庶民にも広く普及している。1バーツ重量の金は市中の金店で気軽に売買でき、銀行預金と並ぶ「庶民の投資先」として根付いている。価格の上下に応じて購入・換金を繰り返す個人投資家も多く、金商協会が1日に複数回価格を改定する場合は市場の動揺を示すシグナルとして注目を集める。
この日の急騰は一時的なものにとどまらず、その後も金価格は高水準で推移した。中東情勢の不安定さが続く限り、金への需要が高まりやすい環境が続くとみられている。タイにとっては生活用品の価格上昇と金価格上昇が同時に進む複雑な状況だ。