原油市場のアナリストが、イランとイスラエルの軍事的緊張の激化とホルムズ海峡の封鎖リスクを根拠に、原油価格が14日以内に1バレル175ドルに達する可能性を警告した。当時の原油価格はWTIで約140ドル前後で推移していたが、さらなる急騰シナリオとして市場関係者の間で議論が高まった。
警告の背景には具体的な情勢変化がある。イラン軍が「ペルシャ湾を完全掌握した」と宣言し、ホルムズ海峡を通過する船舶に対して通行料200万ドルの徴収を始めたとの報道があった。さらにサウジアラビアとUAEが米軍に自国内の空軍基地使用を許可したことで、米・イランの直接対峙が現実味を帯び、戦争のさらなる拡大リスクが意識された。
175ドルというシナリオは2008年7月に記録された史上最高値147ドルを大幅に超える水準だ。このレベルが実現すれば、タイのガソリン価格は1リットル50バーツ(約225円)を超える可能性があるという試算もあった。当時のタイのガソリン価格はすでに42から45バーツ台まで上昇しており、さらに10バーツ以上の上乗せは家庭・企業の双方にとって深刻な打撃となる。
石油輸入の約70%を中東に依存するタイにとって、原油価格の急騰は燃料費だけでなく電気代、輸送コスト、食料品価格と広範囲にわたる物価上昇を引き起こす。石油基金はすでに赤字が急拡大しており、175ドルシナリオが実現すれば補助金の維持は不可能に近い水準となる。
実際には2026年4月以降、中東情勢は一時的に緊張緩和の動きを見せ、175ドル到達は回避された。しかしこの警告は、エネルギー安全保障に脆弱なタイが「中東リスク」に如何に左右されるかを改めて認識させるものだった。代替供給源の確保と備蓄能力の拡充が急務であることは、この危機が浮き彫りにした構造的課題だ。