金相場が2026年3月第4週に週間ベースで1983年以来最大の下落を記録した。米国によるイラン攻撃の延期報道と米ドル高が重なり、「有事の金」買いが一気に巻き戻された。タイ国内では金価格がこの数日で4,000バーツ以上下落し、バンコクのヤワラート(中華街)では売りと買いの双方に動く顧客で金ショップが混雑した。
下落の背景
この下落は単純なリスクオフの巻き戻しだ。中東緊張が高まっていた時期に金は安全資産として買われていた。しかしトランプ政権がイランへの軍事攻撃を「当面見送る」と示唆したことで地政学的リスクへの懸念が一時的に後退し、金の売りが殺到した。
1983年の下落と比較されるのは、当時の金バブル崩壊局面(1980年の1オンス850ドルから80年代初頭にかけての急落)以来の下落幅だったからだ。2026年の下落は1週間で約7〜8%とされており、金市場としては例外的な動きだ。
タイの金市場と投資文化
タイでは金は最も身近な投資対象の一つだ。タイ金商組合(TGTA)が毎日2回の基準価格を発表し、全国の金ショップがこれに沿って売買する。個人が1バーツ重(15.244グラム)単位で手軽に売買できる環境が整っており、銀行口座や株式より金を選ぶ層が多い。
特にバンコクのヤワラート(唐人街)は、数百店もの金ショップが軒を連ねるタイの金取引の心臓部だ。ここでの売買動向は日本の貴金属市場よりも直接的に金相場を反映し、タイの個人投資家の「ムード」を示すバロメーターとなっている。
タイ国内の金価格の推移
タイの金価格(装飾金・金地金)は2026年初頭から中東危機を受けて上昇を続け、3月中旬には金地金の売値が72,000〜73,000バーツ(1バーツ重あたり)近辺まで達していた。今回の急落で一時68,000〜69,000バーツ台まで下落したとされる。
4,000バーツ以上の下落は、100グラム(約6.5バーツ重)を保有していた場合で約26,000バーツの含み損となる計算だ。高値で買っていた個人投資家にとっては痛手だが、逆に底値で仕込みを狙う向きも多く見られた。
今後の見通し
中東情勢が再び緊迫すれば金への逃避買いが戻る可能性が高く、市場は依然として方向感を定めかねている。タイの金商組合は「短期的な乱高下が続く可能性があり、投資目的での購入には慎重な判断が必要だ」と注意を促している。
日本でも2024〜2025年に金価格は過去最高値を更新し続け、1グラムあたり1万2,000円超を記録した局面があった。タイと日本の金価格は国際相場に連動するため、円・バーツの為替レートを考慮した比較が参考になる。