タイとカンボジアが領有権を争うプレア・ヴィヘア(タイ語でカオ・プラ・ウィハーン)周辺の国境地帯に位置する11世紀創建の石造寺院が、過去の国境紛争で損傷を受けたことが改めて確認された。3か月前に停戦が成立したが、寺院には今も戦闘の痕跡が残っている。
紛争の現場となった遺産
寺院はダンレック山脈の頂上(標高525メートル)に建てられた崖の上の遺跡で、カンボジア側に向かって急斜面が続く。クメール王朝時代(9世紀から15世紀)に建設されたヒンドゥー教寺院で、2008年にユネスコの世界遺産に登録された。
世界遺産登録と同時に、タイとカンボジアの間で領有権をめぐる軍事衝突が発生した。2008年から2011年にかけて両国軍が断続的に交戦し、双方に死傷者が出た。停戦後も緊張が続き、2011年の ICJ(国際司法裁判所)の仮処分命令でタイ軍の撤退が命じられる事態になった。
最新の停戦から3か月
今回報じられたのは、最新の停戦成立から3か月が経過した時点での現地取材だ。寺院の壁や柱には銃撃の痕や砲弾による損傷が残っており、千年の歴史を持つ石造建造物が戦闘の犠牲になった形だ。
寺院内部への観光客の入場は制限されており、文化財の保全調査も進んでいない。戦火が止んでも遺産の修復には長い時間と費用がかかる。
タイ・カンボジアの領土問題の構造
プレア・ヴィヘアをめぐる問題は、旧フランス植民地時代(19世紀末から20世紀初頭)に作成された地図上の国境線とその後の実効支配の食い違いから生じている。1962年にICJがカンボジアの領有権を認めたが、タイはこれに反発し、周辺の「4.6平方キロメートル」の土地については係争が続いている。
こうした領土問題が2024年から2026年にかけて再燃した背景には、国内政治の不安定さと民族感情の高まりがある。