アヌティン首相は3月21日、石油事業者に対し戦略的石油備蓄を放出して国民と事業者に供給するよう命じた。命令は3月22日に官報に掲載され、即日施行された。
法的根拠は1973年の石油製品緊急政令(B.E.2516)第3条だ。この法律は中東の石油危機を受けて制定されたもので、首相にエネルギー緊急時の権限を与えている。50年以上前に作られた法律が、再び中東の紛争をきっかけに発動された形だ。
今回の命令は3月6日に出された前回の命令(No.2/2569)を修正したものだ。前回の命令では備蓄の放出に制限がかかっていたが、今回の修正で4項と5項を取り消し、石油事業者が「広く迅速に」備蓄を供給できるようにした。
しかし命令が出た後も地方ではスタンドの在庫枯渇が続いている。ブリーラム県では「無制限に給油できる」との情報が否定され、アーントーン県では燃料会社が運搬書類の不備で告発された。命令と現場の間にはギャップがある。
日本の場合、石油備蓄は国家備蓄(約145日分)と民間備蓄(約90日分)に分かれており、経済産業大臣の判断で放出できる。2022年のロシア・ウクライナ戦争時にはIEAの協調放出に参加して国家備蓄を放出した。タイの備蓄量は98日分とされ、日本より少ない。備蓄の管理体制の違いが、両国の燃料危機への対応力の差に表れている。