タイ東北部カーラシン県のエビ(クン・カームクラーム、淡水大エビ)養殖業者が、燃料高騰による出荷コストの急増に追い詰められている。2026年3月時点で、販売業者も長距離仕入れを手控えるようになり、エビは出荷できないまま池に残り続けている。
燃料高が直撃した経緯
カーラシン県はタイ東北部(イサーン地方)の養殖エビ産地として知られる。タイの食用淡水大エビ「クン・カームクラーム(クルマエビ科の大型淡水エビ)」は、地元の食堂や市場向けに出荷されるほか、バンコクや中部の水産市場にも輸送される。
2026年3月中旬以降、中東紛争の激化による原油高騰でディーゼル価格が急上昇したことで、長距離トラック輸送のコストが一気に跳ね上がった。一部地域ではディーゼルが入手困難になり、スタンドに長い行列ができる事態も続いていた。
この状況が直撃したのが農産品の物流だ。カーラシンから中部地方の市場まで輸送する仲買業者は、「燃料が途中で切れるリスクがある」と判断し、遠距離の受注を見合わせ始めた。バイヤーが来なければ養殖業者は出荷ができず、収獲適期を迎えたエビが池の中にとどまる。
養殖業者が抱えるコスト構造
エビ養殖はランニングコストが高い。飼料代、水質管理のためのポンプ電力、エアレーション装置の電力、そして出荷時の冷蔵輸送費がかかる。このうち電力については、電気代の燃料費連動部分(Ft)が上昇しており、養殖コスト全体を押し上げている。
エビを池に入れたまま長期間飼育し続けると過密状態となり、水質が悪化して病気が広がる。出荷タイミングを逃すと、エビの品質が下がって買い取り価格も下落する。出荷を延ばせば延ばすほど損失が膨らむという悪循環に、農家は追い込まれていた。
水産業への波及
カーラシン県はタイ内陸部の主要なエビ産地の一つだ。同県の養殖エビの年間出荷量は正確な統計がないが、イサーン地方全体では淡水エビの市場規模は年間数百億バーツとされる。今回の燃料危機でイサーン全域の淡水エビ流通が滞った場合、バンコクや観光地での飲食店への供給が減少し、料金への転嫁も懸念される。
タイ水産局はソンクラン(4月)以降の需要期に向けて出荷支援策の検討を始めたが、具体的な補助策は発表されていない。地元の養殖業者組合は「政府に燃料補助か輸送コスト支援を求めていく」と表明している。