タイの金取引大手ファーセンヘン(華盛興行)は、金のスポット価格が2026年で初めて年初来マイナスに転落したと発表した。米国とイランの緊張緩和の動きが伝わり、安全資産への逃避需要が後退したことが背景だ。1オンス4,100ドルを割り込めば本格的な下落トレンドに入るリスクがあるとして、投資家に48時間の状況見極めを推奨した。
この日のタイ国内金価格は106回の値幅調整が行われ、1日で3,550バーツの下落を記録した。バーツ建ての金価格はここ数週間で大きく変動しており、ヤワラートやプラトゥーナムの金ショップでは「売りたい客が急増している」との声が聞かれた。一方で「まだ高値、今売るべき」という人と「一時的な調整、持ち続ける」という人に二分された。
タイ人にとって金は単なる投資商品ではない。タイの若者はアルバイト代を少額ずつ積み立てて金の延べ棒(タイ単位でバート、約15グラム)を購入する習慣があり、農村部では緊急の現金が必要になった時に金を換金する「農村型資産管理」が根付いている。結婚式の持参金や出産祝いに金を贈る文化も強く、価格の急落は家庭の資産価値に直結する。
2026年序盤に金が1オンス4,500ドル台に達した背景には、中東紛争のエスカレーションとそれに伴う地政学リスクの高まりがあった。しかし米国がイランとの緊張を対話で緩和しようとする動きが出ると、戦争プレミアムが急速に剥落した。ファーセンヘンは「4,100ドルを保てば反発もある。ただし4,100ドル割れは長期下落シグナル」と位置づけた。
タイの金取引量は世界的にも多く、タイ金取引協会のデータでは国内の1日あたり取引量は約数万トロイオンス規模だ。投資家だけでなく、金細工師・宝飾店・農村の一般家庭まで価格変動の影響を受ける。