中東の軍事衝突によるバーツ安が進む中、タイ中央銀行(BOT)は2026年3月22日、イランとの戦争が長期化した場合にGDP成長率が0.5%まで落ち込む可能性があると警告した。バーツは2月28日の開戦以来約6%下落し、1ドル32.79バーツまで達していた。
タイ中央銀行の警告
タイ中央銀行の分析によれば、中東の軍事衝突が長引いた場合、2026年のGDP成長率は従来予測の2.5%程度から大幅に低下し、0.5%まで落ち込むリスクがあるという。
主な要因は3つだ。まず原油輸入コストの上昇。タイは電力・製造業・農業など幅広い分野で石油に依存しており、ドバイ原油が158ドル/バレルに達したことで生産コストが全産業に波及した。次にバーツ安による輸入コスト増。原油はドル建てで決済されるため、バーツが下落するほど円換算の支払いが増える。三つ目は観光・貿易の不確実性だ。
バーツ35バーツまで下落の可能性
タイ・エグザミナー紙の報道によれば、バーツは2月28日の開戦以来6%下落し、1ドル32.79バーツとなっていた。中央銀行の試算では、衝突が長引いた場合に35バーツまで下落する可能性も言及されていた。
バーツ安は輸出産業に一定の恩恵をもたらすが、輸入物価の上昇を通じてインフレを加速させる。タイは農業輸出国でありながらも、化石燃料・化学品・機械類の輸入依存度が高く、バーツ安のデメリットの方が大きいと見られた。
タイ経済への波及
製造業では自動車産業(日系メーカーが多い)や電子部品産業への影響が懸念された。タイの自動車産業は東南アジアで重要な生産拠点であり、部品の輸入コスト増や国内需要の低下が重なれば生産調整を迫られる可能性がある。
農業では燃料高が肥料・輸送コストに転嫁される。タイ東北部(イサーン)の米農家や、南部のゴム・パーム油農家にはすでに打撃が出始めていた。中産階級は食料品や日用品の値上がりを直撃されており、消費マインドが冷え込んでいた。
政府の対応と見通し
タイ政府は新内閣(アヌティン・チャーンウィラクン首相)のもとで緊急の燃料対策を打ち出したが、根本的な解決は中東情勢の安定化に委ねられていた。エネルギー省は価格上限の維持と補助金拡充を続けたが、財政負担の増大という別の問題を抱えていた。
国際通貨基金(IMF)や世界銀行も、中東情勢の長期化がアジア新興国経済に与えるリスクを相次いで評価しており、タイは特に原油輸入依存度の高さから影響を受けやすい国として注目された。