バンコクの映画館で2時間21分、ずっと泣いてた。隣のタイ人の女の子も泣いてた。反対側のおじさんも泣いてた。エンドロールが流れ始めても、誰も席を立たなかった。こんな体験、初めてかもしれない。
『ゴハン 〜หัวใจโกโฮม〜』。4月2日に公開されたばかりのタイ映画。制作は去年アジア中を号泣させた『おばあちゃんが死ぬ前に億万長者になる方法』のGDH。あの映画、世界で100億円稼いだんだよね。その次回作がこれ。その次回作となれば、期待しないわけがない。
白い野良犬が「ゴハン」になった
主人公は犬。バーンケーン犬っていう、タイのどこにでもいる雑種。
コンビニの前で生まれた白い子犬が、日本人エンジニアのヒロに拾われる。で、ヒロがこの犬に「ゴハン」って名前をつけるの。そう、日本語の「ご飯」。このネーミングだけでもうちょっと泣きそうになった。
映画は3部構成で、3人の監督がそれぞれ1パートを担当してる。チャヤノップ・ブンプラコップ、バズ・プーンピリヤ(『Bad Genius』の人!)、アッタ・ヘムワディー。タイ映画界のトップクラスが犬の映画に本気で取り組んでいる。
ゴハンは10年の間に3人の飼い主の元を渡り歩く。定年間近の日本人技術者ヒロ(大近良太)、ミャンマー出身の家政婦ナムチャ(ポー・マミ・ター)、そして美大生(タンタワン・タンティウェッチャクン)。言葉が全然通じないのに、犬と人の間に言葉以上のものが生まれる。
日本の犬映画とは全然違う
正直に言うと、最初は「犬の映画でしょ?泣かせに来るやつでしょ?」って思ってた。日本にも『HACHI』とか『犬と私の10の約束』とかあるし。
でも全然違った。
まず、野良犬がリアルすぎる。タイには推定85万〜100万頭の野良犬がいて、バンコクだけで10万〜30万頭。コンビニの前、お寺の境内、ソイの奥。タイに住んでれば毎日見る光景そのままが、この映画のスタート地点になってる。
日本で野良犬を見ることってほぼないよね。でもタイでは「その辺にいる犬」と人間の距離感が独特で、ご飯をあげる人もいれば蹴る人もいる。映画はその曖昧さをそのまま描いてて、それがリアルで胸に来る。
もう一つ。飼い主が日本人、ミャンマー人、タイ人っていう設定が、今のバンコクそのものなんだよね。工場には日本人エンジニア、家事はミャンマー人、カフェにはタイ人の大学生。犬の目を通してバンコクの多国籍な日常が見える。これは日本映画には絶対ない視点。
GDHがタイ映画の常識を変えた
ちょっと前まで「タイ映画」って聞いたら、ホラーかムエタイだった。
それを変えたのがGDH 559。2017年の『Bad Genius』がアジア全域でヒットして、去年の『おばあちゃん〜』はタイ映画として初めてアカデミー賞国際映画部門のショートリスト15作に残った。
GDHの映画って、ハリウッドみたいな派手さはない。でも家族とか身近な人間関係を丁寧に描いて、見た人の心の柔らかいところをピンポイントで突いてくる。『ゴハン』もその系譜。しかも今回は人間じゃなくて犬でそれをやってきた。反則だと思う。
見に行くなら
バンコクの映画館でタイ語音声・英語字幕で上映中。チケットは200〜280バーツ(約860〜1,200円)。SFシネマ、メジャーシネプレックスの主要館でやってるよ。
タイ語分からなくても全然大丈夫。犬の演技に字幕はいらないから。ただしハンカチは2枚持っていって。1枚じゃ足りなかった。
フィリピンでも公開決定してて、日本上映の可能性も高い。前作『おばあちゃんと僕の約束』は2025年6月に日本でも公開され話題になった。『ゴハン』の日本公開も期待したい。
留学中にタイの映画館で映画を見るって、すごくいい体験だと思う。周りのタイ人と一緒に笑って泣いて、言葉が分からなくても感情は共有できる。『ゴハン』はまさにそういう映画だった。
『ゴハン 〜หัวใจโกโฮม〜』 2026年4月2日公開 / 2時間21分 / GDH 559 GDH公式サイト

