バンコク都(กทม.)所属のワット・マハナラム王室寺院学校(โรงเรียนวัดมหรรณพาราม ในพระราชูปถัมภ์ฯ)が、2026年5月18日の新学期初日から、バンコク行政区の公立校として初めて「国際校カリキュラム(International Curriculum)」の本格運用を開始した。チャダ氏バンコク知事と管理チームが朝7時に現地を視察し、運用初日の状況を確認した。
ワット・マハナラムは1880年代にラーマ4世王時代に創立された、タイ国内で「初の近代学校」として知られる歴史的施設。タイ初の近代学校が、150年近く経って「公立国際校カリキュラム」第1号となる、というストーリー性がある事案だ。同時に、バンコク都が公立校の児童に「Phone Off Learning On」(携帯オフ・学習オン)制度を公式に導入することも明らかにされた。
国際校カリキュラムの中身
チャダ知事の説明によると、ワット・マハナラム学校で導入されるカリキュラムは、(タイ国内では一般的な)EP(English Program、英語強化プログラム)とは異なる、本格的なインターナショナル校カリキュラム。
- タイ語以外の全科目を英語で実施
- 外国人教師5名を新規採用(トルコ・南アフリカ・ロシア・イギリスから)
- カセツアート大学が監修した15日間の基礎調整コースを修了済み
- 休暇中に英語キャンプ(4月20日〜5月8日)を実施
- AI戦略統合の研修を教師に提供
- ナワミントラティラート大学と提携で附属校化計画
公立校への国際カリキュラム導入は、タイ教育省・バンコク行政区が長年議論してきた構想。実現のハードルは、(教師確保)、(カリキュラム認定)、(児童の言語準備)、(科目間の連携設計)、と多数あったが、ナワミントラティラート大学教育学部の伴走で初の実行に至った。
「Phone Off Learning On」制度の意義
チャダ知事はあわせて、バンコク行政区所属の全公立校で「Phone Off Learning On」制度を公式化することも表明した。
具体的な運用は次の通り。
- 児童は朝、自分の携帯電話を担任教師に預ける
- 必要時のみ取り出し、連絡・学習活動に使用
- 一律禁止ではなく、行動変容を促す設計
- 学校別の運用ガイドラインを策定中
近年、児童・生徒のスマートフォン依存・SNS中毒・学習集中力低下が世界的な社会問題化している。フランス・オーストラリア・中国の各国で類似の規制が始まり、タイのバンコクも追随する形だ。完全禁止より「必要時利用可+原則預かり」のソフトランディング方式が選ばれた点が特徴。
ワット・マハナラムの歴史
ワット・マハナラム王室寺院学校は、1884年(仏暦2427年)にラーマ4世王の発願で創立されたとされる、タイ近代教育の発祥校の一つ。プラナコン区(王宮地区)のラーチャダムヌン通り沿いに位置する。
歴史的に多くの公務員・知識人を輩出してきたが、近年は児童数の減少と老朽化施設の課題に直面していた。今回の国際校化は、施設改修+カリキュラム刷新+教師強化のセットでの「再生プロジェクト」として位置づけられる。
ワット・マハナラム寺院自体は、寺院・学校・コミュニティセンターとして地域に根ざしており、タイ仏教教育と近代教育の融合体としての文化的価値も持つ。今回の国際校化により、観光地としての注目度も上がる可能性がある。
関連背景
バンコクで子育てをする日本人駐在員家庭にとって、この事案は次の場面で関心が高まる。
公立校の質的向上は、長期的に駐在員家庭の学校選択肢を広げる可能性がある。現状、日本人駐在員家庭は日本人学校(JSB)・インターナショナル校(ISB、NIST、Patana、Berkeley、Concordian等)を選ぶケースが大半で、年間学費は40万〜100万バーツ。公立校の国際カリキュラムが質的に確立すれば、年間1〜5万バーツの公立校への選択肢が出てくる可能性がある。
「Phone Off Learning On」制度は、日系インターナショナル校・JSBの保護者にも示唆を与える。日本人学校はすでに同様のスマートフォン規制を運用しているが、バンコクの公立校が同じ方向に動くことで、子育て世帯全体の認識として「学校では携帯預け」が定着する。家庭での携帯利用ルールも、これに合わせて再検討する余地がある。
ワット・マハナラム学校は王宮地区にあり、観光と教育を組み合わせた地域作りの参考事例にもなる。日本の児童・学生グループの修学旅行・短期留学先として、視察対象になる可能性も今後出てくるかもしれない。
まとめ
タイ初の近代学校ワット・マハナラム学校が、150年近くを経てバンコク行政区初の国際カリキュラム校に転換。同時にPhone Off Learning On制度も公式化され、バンコク都立校の運営改革が前進した。在タイ日本人家庭は、公立校の選択肢拡大・スマートフォン規制の社会的合意形成、という2つの観点で押さえておきたい教育政策事案だ。