タイ・ノンカイ県の有名寺院の住職が13歳の少女に対する不適切行為で告発される事件が、5月11日にMatichonで報じられ、タイ仏教界に再びスキャンダルが直撃している。住職の不祥事を撮影したクリップ動画がオンライン流出した後、住職は寺院から逃走。元弟子(อดีตลูกศิษย์)が住職の長年の問題行動を詳細に告発する形となり、警察が現在身柄確保に向けて捜査中だ。タイの仏教界では2017年以降、住職による児童・若年者への性的犯罪が連続して発覚しており、(A)寺院の権力構造、(B)住職の絶対的権威、(C)僧伽の自浄機能不足、が構造的問題として浮き彫りになっている。
事件の経緯は次の通り。タイ・ノンカイ県内の有名寺院の住職が、13歳少女に対する不適切な性的行為に及んでいたとされる。その様子を記録したクリップ動画が何らかの経路でオンラインに流出し、ソーシャルメディアで急速に拡散。住職は事態を察知して寺院から逃走した。警察はクリップ動画の証拠と元弟子の供述を元に、住職の身柄確保に向けて全力で捜査中。
告発の主体は元弟子だ。住職の元で修行・学習していた元弟子が、(1)今回の少女への行為だけでなく、(2)過去の住職の不適切行動、(3)寺院運営の問題、(4)金銭管理の疑惑、を含めて詳細に告発。元弟子としての立場から「住職の本性を知り尽くしている」内容の証言で、警察捜査の重要な情報源となっている。
タイ仏教界のスキャンダル連続は深刻だ。2017年以降、(A)2018年・2019年のチョンブリ県寺院での性的虐待事件、(B)2024年のコラート県寺院での13歳少女虐待事件、(C)2024年のクラビ県寺院での寺院金銭詐欺、(D)2025年のバンコク・トリトサテプ寺院での金銭横領+クリップ流出、など、複数の住職による犯罪事件が発覚してきた。本件はその系譜の延長線にあり、社会的衝撃が大きい。
タイ社会の反応も急速に強まっている。ソーシャルメディアでは「仏教界の自浄機能はどこに行ったのか」「住職の絶対権威を制度的に抑制する必要がある」「寺院への寄付を再考すべき」など、宗教制度の根本的見直しを求める声が高まっている。住職という地位の絶対的権威がもたらす腐敗構造への批判が、世論の主流となりつつある。
タイの法的対応は段階的だ。本件のような児童への性的犯罪は、(i)タイ刑法児童保護条項に基づき最高15-20年の懲役、(ii)僧伽による「強制還俗(จับสึก/ジャプスック)」処分、(iii)寺院の運営権剥奪、を順番に適用する。元住職としての立場で送検され、一般人として刑事裁判を受ける流れとなる。
僧伽(タイ仏教教団)の自浄機能の不足は、構造的問題として認識されている。住職は寺院の絶対的権威者として、(A)寺院運営の単独決定権、(B)信徒からの寄付の管理権、(C)若年僧侶・弟子への絶対的指導権、を持つ。チェック機能が弱く、不祥事が表面化するまで長期間隠蔽されることが多い。
直近では5月5-8日にバンコクのラム53でトランス女性のコーラン侮辱事件が頭剃り謝罪に発展、5月11日にラム53抗議でレインボー協会が「私刑反対」声明など、宗教関連の社会的緊張が連続している。今回の住職事件は、タイ社会の宗教的価値観の再構築の文脈に位置付けられる。
タイ在住の日本人駐在員家族にとっては、(1)地域の寺院に子供を「弟子」として預ける際は慎重に判断、(2)住職の人格・評判を事前に十分確認、(3)日本人学校・国際学校の宗教教育で「絶対権威への盲従」を避ける教育、などが重要となる。タイ仏教全体への信頼は依然として高いが、個別の寺院・住職への盲信は避けるべきとの認識を持ちたい。