タイ警察庁中央捜査局(CIB)の長官が5月11日、ランプン県パーザン郡の有名「業(カルマ)を解く先生」ことアジャーン・ケッカム宅の家宅捜索結果を発表した。シーツや衣類などの重要証拠が押収され、近く出頭命令が出される見通し。当人は事件の本筋には触れず「この件で自分の名誉が傷ついた」と警察に嘆いたという。32歳のビジネスマンが「業を解く名目で性的暴行を3回受けた」と告訴した事件の続報で、捜査が本人特定段階に進んだことを示す。
中央捜査局は5月10〜11日にかけて、パーザン郡内のアジャーン宅を家宅捜索。本人の協力を得て捜索が行われ、(1)シーツ、(2)衣類、を物証として押収した。一方で、(3)わいせつ書籍、(4)動物関連の文書、は発見されなかった。これは「VIP予約者を寝室に通して儀式を装う」と告発された手口の物証収集として位置付けられる。
家宅捜索の現場で、アジャーン本人は事件の本筋について「ノーコメント」を貫き、代わりに「この件で自分の名誉と評判が大きく傷ついた」と捜査官に嘆いたという。中央捜査局長は「影響力者からの圧力には屈しない」と明言、出頭命令発出後は本格的な取り調べに移行する方針を示した。
被害者は現在2人。当初の32歳ビジネスマン(VIP予約で性的虐待を3回受けたと告発した男性)に加え、新たに1人が警察に被害届を提出した。告発内容は性的暴行と「精神錯乱を装った行為(พฤติกรรมวิกลจริต)」を含み、複数被害者の証言が固まれば事件の組織性が立証される構造となる。中央捜査局は「ほかにも被害者がいる可能性が高い」として、一般市民への情報提供呼びかけを継続中。
この事件は5月8日に当人が施設閉鎖と「幻想ブロック中止」を発表するなど、本人側が「鎮静化」を狙う動きを見せていた経緯がある。一方で、5月7日には中央捜査局への正式告発が成立しており、捜査の進展は不可避だった。今回の家宅捜索+出頭命令準備は、その帰結として位置付けられる。
タイ社会では「業(กรรม/カルマ)を解く」と称する民間信仰の儀式が一般的に存在し、アジャーン・ケッカム(業を解く先生)と呼ばれる宗教的影響力者が地域コミュニティで強い権威を持つ。今回の事件は、その権威構造が「VIP予約・寝室での儀式・性的接触」というグレーゾーンを内包していた可能性を浮き彫りにする。家宅捜索の押収品「シーツ・衣類」はその構造の物証となる。
タイ在住の日本人駐在員家族にとっては、文化的観光地のチェンマイ・チェンライ・ランプン周辺を訪れる際に「占い師・カルマ祓い師・有名な祈祷師」の高額予約を勧められた場合の警戒材料となる。タイ社会の伝統的な民間信仰は尊重されるべきだが、「VIP予約料金が高額」「個室での儀式を要求」「身体接触を伴う」などの要素が組み合わさった場合、安全な距離を保つことが重要だ。