タイ警察中央捜査局(BCH)と入国管理局が2026年5月7日、中国大手ゲーム会社をハックしてソースコードを盗み、海賊版ゲームを作成して900万元(約4000万バーツ)の被害をもたらした中国人プログラマーの王氏(34)を、バンコク・スクムビット通り沿いの高級コンドミニアムで逮捕した。中国当局の手配書を受けた逮捕で、国外退去手続きへ移行する見通し。
スクムビット高級コンドで王氏(34)逮捕、9百万元被害のハック事案
逮捕されたのは中国国籍の王氏(34)。スクムビット通り沿いのクロントンヌア町ワッタナ区にある建物内で身柄を確保された。捜査を指揮したのは中央捜査局のナッタサック・チャオワナサーイ局長で、保護局のティーラチャート・ティーラチャートタムロン局長、ブンルー・パドゥンティン副局長、ノッパラット・カムマーク巡視課長らが入管局の特別調査部と連携して捜査にあたった。
王氏は中国の大手ゲーム会社にハッキングを行い、ゲームのソースコードを盗み出した上で、それを基に海賊版ゲームを開発・販売していた疑い。被害額は約900万元(約4000万バーツ相当)で、中国当局からは社会脅威人物として正式に手配書が発行されていた。
中国大手ゲーム会社からのソースコード盗難と海賊版作成の経緯
事件の発端は中国国内のゲーム会社の被害発覚で、ハッキング元の追跡が進む過程で容疑者がタイに逃亡している事実が判明した。王氏はタイのコンドミニアム生活者として一定期間滞在しており、入国管理法上の禁止事項に該当する行為を継続していた。
ソースコードを盗まれたゲーム会社は中国国内市場における海賊版被害だけでなく、知的財産侵害による中長期の収益喪失と評判毀損のリスクを抱えた。海賊版ゲームの流通は中国・東南アジア圏でアプリストア外配布のグレーゾーンを利用するケースが多く、追跡が難航する性質を持つ。
瀾滄-メコン法執行協力センター(LMLECC)経由の情報共有
逮捕に至った決定的な情報共有は、瀾滄-メコン法執行協力センター(Lancang-Mekong Law Enforcement and Cooperation Centre、LMLECC)の枠組みを通じて行われた。LMLECCは中国・タイ・ラオス・ミャンマー・カンボジア・ベトナムの6ヶ国が参加するメコン圏の法執行協力枠組みで、麻薬密輸、サイバー犯罪、人身売買、越境逃亡犯の捕捉などを連携課題としている。
今回のように中国当局からタイ側へ手配対象人物の所在情報が共有され、タイ警察が現地で身柄を確保するパターンは、過去数年で確実に頻度が増している。サイバー犯罪・知財事犯への国際協力の実例として位置付けられる。
バンコク在住中国人とアジアサイバー犯罪の現状
バンコクのスクムビット周辺は中国人駐在員・投資家の居住地として人気が高いエリアで、コンドミニアムの長期賃貸利用者が多い。入国管理局の運用でも、中国国内で手配された人物がタイで生活する事例は複数年にわたり捕捉が続いている。
サイバー犯罪・知的財産侵害の容疑で逃亡した人物がタイに潜伏するパターンは、ハッキング、海賊版、フェイク投資詐欺、暗号通貨のマネーロンダリングなど多岐にわたる。在タイ日本人にとって直接的な被害リスクは低いが、コンドミニアムの隣人や同じ建物内に手配対象者が居住している可能性は決してゼロではない。建物内の不審な動きや警察の捜査活動に遭遇した場合、現場から距離を取る判断が安全につながる。