ナコンパトム県ムアン郡タコン地区で4月2日、子どもに物乞いを強制していた夫婦アートン(36歳)とピムウィモン(32歳)が人身売買の容疑で逮捕された。タコン地区の家宅を捜索した結果、17歳・16歳・11歳の少年3人が保護された。少年たちは3年から最長9年にわたって搾取されていた。
「QRコード物乞い」という近代的な手口
特筆すべきは手口の巧妙さだ。容疑者夫婦は自分たちの銀行口座に紐づけたQRコードのステッカーを物乞い用の箱に貼り付け、現金だけでなくPromptPayでの電子決済にも対応させていた。タイでQRコード決済が普及したことを悪用した形だ。
少年たちには学校の制服を着せ、同情を引く外見で物乞いをさせた。活動範囲はナコンパトムのプラパトムチェディ(黄金色の仏塔)周辺の市場や寺院の縁日、コンサート会場に加え、パタヤにまで及んでいた。毎晩午後6時から午前2時まで働かされ、獲得した金額を夫婦に報告する義務を負っていた。金額が少なければ暴行や脅迫が待っていた。
押収物から見える実態
家宅捜索で押収されたのは、現金5万2,200バーツ(大半が20バーツ紙幣)、車2台、バイク6台、サイドカー付きバイク2台、金3バーツ(約45グラム)、物乞い用の箱、学校の制服、QRコードステッカーだ。大量の20バーツ紙幣は、路上での積み重ねの産物だ。
タイの「観光地物乞い問題」の現状
タイでは観光地を中心に子どもの物乞いが長年の社会問題となっている。バンコクやパタヤ・プーケットなどの観光地では今も物乞いを見かけることがあるが、その多くが組織的な搾取のもとにあるとされている。タイ社会開発・人間安全保障省は「子どもへの施しは与えるな。必要なら当局に通報せよ」と観光客に呼びかけている。
保護された少年3人は関連機関に引き渡され、心理ケアとリハビリのプログラムに入った。容疑者夫婦には人身売買および脅迫による児童の不法搾取の罪が適用される見込みで、タイの人身売買防止法では重刑が科せられる。