事件が世間に知られたのは2022年ごろ、タイの人気テレビ番組がこの青年の境遇を取り上げたことがきっかけだった。通称「ノーンファー」として知られるジラワット・ラオスワン氏は、雇い主の女性とその家族から15年以上にわたり日常的に暴行を受けていた。
殴打による骨折は治療を受けられないまま放置され、骨が正常な位置に戻らないまま固まった。顔面は大きく変形し、口は裂け、全身に無数の傷跡が残った。長年にわたり助けを求められる環境になく、被害は深刻化する一方だった。
事件発覚後、裁判所は雇い主ら3人に対しそれぞれ懲役14年6か月と罰金122万バーツ(約606万円)を言い渡した。被害者への損害賠償として合計670万バーツ(約3,330万円)の支払いも命じている。
刑事裁判と並行して、ジラワット氏はバンコクのW整形外科病院で本格的な顔面再建に入った。目元の修正、唇の再建、フェイスリフト、耳の形成など、5人の専門医チームが複数回にわたる手術を担当した。
手術開始から4年が経過した2026年4月、同病院がFacebookに投稿したジラワット氏の最新写真が大きな反響を呼んだ。かつての面影がないほど顔は整い、回復率は約90%に達したという。投稿には「まるで別人だ」「医療チームの技術に感謝」といった称賛のコメントが殺到した。
日本では想像しにくいが、タイでは家事使用人や農業労働者が雇い主から長期にわたって暴行を受けるケースが報告されている。閉ざされた環境で被害が見過ごされやすく、ジラワット氏の事件もテレビ番組が介入しなければ発覚しなかった可能性がある。
15年という長い虐待の末に、4年かけて「新しい顔」と「新しい人生」を手にしたジラワット氏。SNSで公開された笑顔は、多くのタイ人に希望を与えている。