ホルムズ海峡付近でタイ登録の貨物船「マユリー・ナーリー」号が正体不明の攻撃を受けた後、イラン領のケシム島沖に座礁しているとイランのタスニム通信が報じた。乗組員20人はオマーン海軍に救助されたが、タイ人技術者3人の安否は確認されていない。
攻撃の経緯
「マユリー・ナーリー」号はタイのプレシャス・シッピング(Precious Shipping PLC)が運航するばら積み船だ。オマーン北部沿岸から約11海里の地点を航行中に、正体不明の物体が船尾に衝突し爆発が起きた。機関室で大規模な火災が発生し、制御不能となった船は漂流してケシム島付近に座礁した。
ホルムズ海峡は1日に約2,000万バレルの原油が通過する世界最重要の海上交通路で、イラン・オマーン・アラブ首長国連邦の3カ国の海域が入り組む複雑な地帯だ。米国・イスラエルとイランの対立が激化していた2026年3月は、この海域での緊張が極度に高まっていた。
タイ人乗組員の状況
20人の乗組員はオマーン海軍の救助船に収容され、安全が確認された。しかしタイ人技術者3人が損傷した船体内に取り残されていると報告された。船内への接近は困難を極め、タイ海軍と外務省が連携して救出作戦を進めていた。
タイ外務省は「3人の安全を最優先に、慎重に作戦を進めている」と発表した。タイ海軍はフリゲート艦を現場付近に向かわせる準備を進めたが、紛争地帯での作戦には国際的な協調が必要で、オマーン・イランの両政府との外交チャンネルを同時に活用していた。
タイとホルムズ海峡
タイは中東からの原油輸入に大きく依存しており、原油輸入量の約70%がホルムズ海峡を通過する。同海峡での事案はタイの原油供給に直接影響する問題だ。2026年3月の燃料危機もホルムズ海峡の安全確保への不安が市場心理に影響し、投機的な買い占めを招いた面がある。
タイ政府は海運業界に対し、ホルムズ海峡を通過する際の安全対策強化を要請していた。プレシャス・シッピングはタイの大手海運会社で、バンコク証券取引所(SET)に上場している。この事故で同社の株価は数日間にわたって下落した。
国際海事問題としての側面
タイ登録船への攻撃は、純粋に軍事的・政治的な紛争に无関係の民間船舶が被害を受けるという、国際海事法上の重大問題を提起する。国連海洋法条約(UNCLOS)は民間船舶の安全な航行権を保障しており、タイは国連の枠組みを通じた事態の解決を求めた。