タイ政府の啓発番組「ออฟฟิศ ติด(ส)แกรม(オフィス・ティット(ス)グラム)」第6回が、詐欺の新たなトレンドとして「見知らぬ人ではなく信頼している人を通じた詐欺」を取り上げた。2026年3月に放送されたこのエピソードは、友人や知人を「無意識の協力者」として利用する手口を詳しく解説した。
手口の詳細
詐欺グループは、SNSを通じて一般の人物(ターゲットの知人)を最初の接触点として選ぶ。この「協力者候補」には高収益の投資案件や副業の紹介役を依頼し、達成報酬を約束する。協力者候補は自分が詐欺に関わっているとは気づかず、善意で友人や家族に話を広める。
被害者は「あの人が言うなら信頼できる」と思って投資や購入を決断する。これが「信頼を悪用する詐欺」の本質だ。見知らぬ人からの連絡なら怪しむところを、知人経由だと警戒心が大きく下がる。
なぜこの手口が増えているか
タイ当局の分析によると、詐欺対策の啓発活動が進んだことで「知らない番号からの電話は取らない」「SNSの怪しい投資話は無視する」という意識が高まっている。そのため詐欺グループは「信頼のフィルター」を突破するために、知人ルートを活用するようになった。
具体的な事例として、友人からLINEで「確実に月10%増える投資がある」「体験したら本当に良かった、試してみない?」という誘いが来るケースが報告されている。友人本人は詐欺を意図していないが、結果として被害の拡大に協力してしまう。
番組「ออฟฟิศ ติด(ส)แกรม」について
この啓発番組はタイ政府(首相府や関係省庁)が制作するオンライン動画シリーズで、若い世代に向けて詐欺や法律をわかりやすく伝えることを目的としている。Facebook、YouTube、TikTokで配信されており、視聴者数は回によって数十万から数百万に及ぶ。
番組名の「ติด(ส)แกรม」は「Instagram」と「ติดสแกม(詐欺にはまる)」を掛けたダジャレで、SNS世代に向けた遊び心のあるタイトルだ。
対策と心構え
タイ警察のサイバー犯罪捜査部(CCIB)は、知人からの誘いでも「自分で別のルートで情報を確認すること」「金銭を伴う話は必ず第三者に相談すること」を推奨している。
タイの詐欺被害は年間1,000億バーツを超える規模に達しており、2025年には1日あたり約7,000万バーツの被害が発生した。知人経由の手口がその中でも増加傾向にあり、家族や友人関係を通じた被害が後を絶たない。