タイ投資委員会(BOI)が3月25〜26日、中国・上海で開催された半導体展示会「SEMICON China 2026」に参加し、世界の半導体大手5社と直接投資交渉を行った。BOI長官のナルット・テルダサティーラサック氏が自ら交渉を率い、タイを東南アジアの半導体製造拠点として売り込んだ。
今回のロードショーはタイ半導体電子産業協会(THSIA)との共同開催で、「チップ・メイド・イン・タイランド」をスローガンに掲げた。BOIはタイに半導体の前工程(ウェハー加工・フォトリソグラフィ)から後工程(パッケージング・テスト)までのサプライチェーンを構築する計画を提示した。交渉した5社は公式には社名を明かしていないが、台湾・韓国・米国の大手企業が含まれるとされる。
現在タイは半導体のパッケージングとテスト工程(OSAT)では一定の集積があるが、ウェハー製造(前工程)はほぼゼロだ。世界的に見て、前工程の製造拠点は台湾・韓国・米国に集中しており、中国依存から脱却しようとする企業が新たな生産地を探している。タイはベトナムやインドと並んで候補地の一つとして浮上しており、BOIは特別投資優遇策(法人税免除最大15年など)を提示している。
BOIが半導体誘致を加速する背景には、自動車産業への過度な依存からの脱却がある。タイの製造業の約10%を担う自動車業界は、中国系EV企業の台頭で圧迫を受けている。半導体産業は雇用の質と単価が高く、同じ土地・インフラ投資でより大きな付加価値を生む。エネルギー集約度も石油精製や鉄鋼より低く、燃料高騰の影響を受けにくい点もメリットだ。
課題は人材と研究開発基盤の不足だ。半導体製造には精密な制御が必要な高度技術者が必要で、タイの大学の理工系学部では即戦力エンジニアの輩出が追いついていない。政府は半導体人材育成プログラムを開始しているが、企業が求める規模に達するには数年単位の時間がかかる。