ペッチャブーン県でガソリンスタンドの外に数十台の車が並び、前夜の夕方4時から翌朝まで何時間も待ち続ける光景が2026年3月下旬に確認された。農家やトラクターを動かす農業従事者が必死に燃料を確保しようとしている状況が、地方の深刻な燃料危機を如実に示している。
列を作る農家の実情
ペッチャブーン市内のPTスタンド前には、夕方から深夜にかけて数十台の車が列を作った。200リットルの大型タンクを荷台に積んだトラックも混じっており、明らかに農業用に大量確保しようとしている姿だった。
農家のニッタヤー(女性)は「スイカ50ライ(約8ヘクタール)を育てている。収穫期を迎えており、毎回30〜40リットルのディーゼルで用水ポンプを動かしている。3日前も午前2時に来て並んだ。あのときはやっと手に入れた」と語った。
農業の構造的なディーゼル依存
タイの農業はポンプ灌漑、コンバイン収穫機、農業トラクター、農作物の運搬トラックなど、多くの場面でディーゼルに依存している。電動化が進む工場や乗用車と異なり、農業の電動化はまだ黎明期で、代替の選択肢が限られている。
ペッチャブーン県はスイカ・トウモロコシ・コメなどの農業地帯で、播種・灌漑・収穫の各段階でディーゼルが必要だ。1日50リットル以上を使う農家も多く、価格高騰はそのまま農業コストに直撃する。
燃料不足で農作業が止まる危機
「燃料がなければ、50ライのスイカに水が与えられず、全滅する」と農家たちは口をそろえる。スイカは乾燥に弱く、収穫直前に水切れを起こすと品質が著しく落ちる。燃料確保のために一晩並ぶことは、農家にとって「農業を守るための最後の手段」だ。
政府は農業用ディーゼルへの優先配給を検討したが、実施には時間がかかった。一方で、ガソリンスタンドのオーナーは「配給量の上限が設けられており、来たお客さん全員に売れるわけではない」と苦衷を明かした。