チャイナート県の寺院と地域コミュニティが2026年3月、廃プラスチックを熱分解して燃料に変える装置を稼働させ、自家製ガソリンやディーゼル代替オイルを生産していることが報じられた。全国的な燃料不足の中での自給自足の取り組みとして、タイメディアが大きく取り上げた。
技術の仕組み
採用されているのは「パイロリシス(pyrolysis、熱分解)」という技術だ。廃プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)を無酸素の環境で高温(300〜700度)に加熱すると、ガス状の炭化水素が発生する。これを冷却して液化させると、軽油に似た性質のオイルが得られる。
Khaosodの取材によると、ワット・スリーチャイワッタナーラーム(วัดศรีชัยวัฒนาราม)が地域住民と協力して設備を設置した。比較的シンプルな構造の蒸留装置で、村の大工や電気工事の知識があれば組み立て可能とされる。精製したオイルはガソリンエンジンよりも、農業用の灌漑ポンプや草刈り機での利用に向いているという。
2つの効果:廃プラ処分+エネルギー自給
この取り組みが注目されたのは、廃棄物処理とエネルギー確保の2つの問題を同時に解決できる点だ。農村地帯では廃プラスチックの適切な処分先が少なく、野焼きが行われるケースも多い。パイロリシス装置を使えばプラスチックごみを減らしながら燃料を得られる。
タイでは農村部の廃プラスチック問題は深刻だ。プラスチック包装の消費量が多い一方、農村の廃棄物収集インフラは不十分で、河川や土壌へのプラスチック流出が環境問題となっている。
技術的な限界と課題
ただしパイロリシスによる家庭内・コミュニティ規模の燃料生産には課題もある。精製の純度が商業用燃料に比べて劣り、不純物が多い場合はエンジンを傷める可能性がある。また熱分解の過程で有害なガスが発生することがあり、適切な排気装置なしには安全上のリスクがある。
このため専門家からは「試みとしては意義があるが、安全管理と品質管理の体制を整えた上で使用することが重要」との意見も出ている。
燃料危機が生んだ「創意工夫」
2026年3月のタイの燃料危機は、チャイナートのような農村部でも「待つだけでなく自分たちで解決しよう」という動きを生んだ。中部タイの農業地帯として知られる同県では、農家がプラスチック廃棄物を価値ある資源として見直す機会にもなった。政府も地域コミュニティが主体的に問題解決に取り組む事例として、この取り組みを紹介した。