タイ南部ソンクラー県ノーンチョック区内のイスラム宗教学校(ポノー校またはタディカ)で、小学3年生の9歳の男児がアラビア語の朗読に失敗したとして教師から17回殴打された。男児の母親(25歳)が当局に助けを求め、息子の腕には打撲のあざが残っていた。
事件の詳細
バンコクのKhaosod Englishの報道によると、9歳の男児がイスラム宗教学校でのアラビア語朗読の練習中に、教師の要求通りに読めなかったことで17回にわたって叩かれた。被害児童の母親が外部に助けを求め、報道されることとなった。
母親は当局に対し、「息子の腕に複数のあざがあった。先生に聞いたら認めた」と訴えた。学校側の関係者からの公式コメントは報道時点では得られていなかった。
タイ南部のイスラム教育の実態
タイ深南部(ナラティワート、ヤラー、パッタニー、ソンクラー南部の一部)はムスリムが人口の8割前後を占める地域で、イスラム教育機関が多数存在する。公立学校と並行して「ポノー(ปอเนาะ)」「タディカ(ตาดีกา)」と呼ばれるイスラム式宗教学校に通う子どもが多い。
アラビア語はイスラム教の礼拝(サラート)やコーランの朗読に不可欠で、幼い頃からの習得が求められる。教師に権威があり、厳しい指導が当然視される文化的背景がある。
しかし体罰は2010年のタイ教育省規則改正以降、公立・私立問わず全教育機関で禁止されている。宗教学校に対してもこの規則は適用される。
体罰問題の現状
タイの学校現場における体罰はいまだ根絶されていない。子どもの権利保護機関のデータによると、体罰を「経験した」と回答する生徒は全国調査でも1割前後に上る。農村部や宗教系教育機関での報告が多く、地域によって意識の差がある。
2026年3月に報じられた今回の事件は、南部の宗教教育での体罰問題を改めて浮き彫りにした。タイ教育省は調査に乗り出したとしているが、遠隔地の宗教機関への行政監督には課題が残る。
子どもの権利と宗教的慣習の狭間
タイはCRC(国連子どもの権利条約)の批准国であり、子どもの身体的安全は法的に保護されている。体罰は禁止されているが、宗教的慣習や文化的規範が法的保護を阻む場合がある。南部の教育現場での体罰廃絶は、単純な法執行だけでなく地域社会の意識変革を伴う長期的な課題だ。