元情報機関トップのナンティワット・サマート氏は、タイのビザ免除制度が犯罪や不法滞在のリスクを高めていると警告し、外国人観光客の入国規制を強化するよう政府に求めた。中東情勢の長期化と国際的な治安情勢の変化を背景に、安全保障上の懸念が高まっている。
タイは近年、観光業の振興策として多くの国々に対してビザ免除または到着時ビザ取得の制度を拡大してきた。2023年から2025年にかけてはインド、中国、ロシア、欧米諸国などへのビザ免除を段階的に広げた結果、外国人観光客数は一時的に急回復した。しかし同時に、外国人犯罪グループの潜伏・活動基盤としてタイが使われるケースも増加しており、オンライン詐欺、人身売買、麻薬密輸などへの外国人関与が繰り返し報じられている。
入国管理局はすでに審査の厳格化に着手しており、過去に犯罪歴がある人物や、不審な入出国パターンを持つ外国人への対応を強化している。中東情勢の長期化によって安全保障上の懸念がさらに高まれば、政府が追加的な入国制限措置を取る可能性がある。特定国籍者への追加的な審査強化や、ビザ免除対象の見直しが検討されているとの情報もある。
観光業界からは反発の声も上がっている。タイのGDPの約12%を占める観光業にとって、入国規制の強化は訪問者数の減少に直結するリスクがある。2026年はソンクラーン後の大型連休が終わった段階で、観光業界はコロナ禍後の回復基調を維持することを最優先課題としており、安全保障強化と観光振興のバランスをどう取るかが政策的な難題となっている。
入国管理と国家安全保障の強化は世界的な流れでもあり、タイだけの問題ではない。日本でも入国審査の厳格化と観光客誘致のバランスが議論されており、タイの対応はASEAN全体の観光・安全保障政策にも影響を与えうる。