タイの燃料危機が地方経済を直撃している実態が2026年3月下旬に明らかになった。サムットサーコーン県では漁船に使う「グリーンオイル(น้ำมันเขียว)」が1リットルあたり6.5バーツ値上がりし、採算が取れなくなった漁船が次々と港に戻っている。農業や漁業を基盤とする地方産業への構造的な打撃だ。
サムットサーコーンの漁業危機
Thaigerが伝えたサムットサーコーン漁業組合のモンコン・モンコントリラック氏のコメントによると、漁船用の補助燃料「グリーンオイル」が1リットルあたり6.5バーツ値上がりし、1日の操業コストが大幅に増加した。漁業収入がコスト増加分を吸収できないため、操業を続けるほど赤字が膨らむ状況だ。
モンコン氏は「燃料費が上がりすぎて海に出られない。政府に早急な介入を求める」と訴えた。同県はバンコクから西南約30キロに位置し、タイ最大級の水産加工拠点として知られる。「タイの台所」とも称されるほど食品加工業が集積しており、操業停止は食品供給にも影響しかねない。
グリーンオイルとは
「グリーンオイル(น้ำมันเขียว、正式名:น้ำมันดีเซลสำหรับเรือ)」は農業・漁業用に補助価格で提供されるディーゼル燃料の通称だ。政府が石油基金を通じて通常のディーゼルより安く供給してきたが、2026年の燃料危機でこの補助も維持が難しくなっている。
農漁業向けの燃料補助制度は農村部の経済を支えてきたが、国際原油価格の急騰局面では補助の財政的な限界が露呈する。
農業への連鎖
水産業だけでなく、稲作・野菜・果物農家でも農業機械の燃料確保が困難な状況だった。トラクター、ポンプ、農産物輸送トラックがすべてディーゼルに依存しており、特に農繁期のイサーン地方やチュムポーンなどの農業県での打撃が深刻だった。
農業経済調査事務局(OAE)は燃料危機による農産物の収穫・輸送コスト増加が生産者価格を圧迫し、農家収入の減少につながると試算した。
政府の対応
エネルギー省は漁業用燃料補助の継続を確認しつつも、「補助の規模は市場価格と財政状況に応じて調整せざるを得ない」と述べた。サムットサーコーン県知事は漁業者の陳情を受けて中央政府への要請を行ったが、具体的な支援策は発表されていない。