アヌティン・チャーンウィラクン氏の首相再選が、292票以上の賛成票を確保したことで確実視されている。プームジャイタイ党を率いるアヌティン氏は2025年末から首相職を務めており、2期目の続投となる見通しだ。
しかし再選の勢いに水を差す事態が発生している。憲法裁判所が、今回の首相指名投票で使用されたQRコードおよびバーコード付き投票用紙の合法性について、6対3の賛成多数で審理を開始することを決定したのだ。投票用紙に印刷されたQRコードやバーコードを通じて個々の議員の投票内容が追跡できる構造になっており、秘密投票の原則に反するのではないかという訴えが提起された。
タイの首相指名投票は国会議員が行う形式だが、憲法上の秘密投票原則との整合性が論点となっている。バーコードが示す情報の範囲や、実際に投票の秘密が侵害されたかどうかについては法学者の間でも意見が分かれており、憲法裁がどのような判断を下すかは現時点では予断を許さない。
過去にタイの憲法裁判所は政治的に大きな影響を持つ判決を複数下してきた。2008年にはサマック元首相、2010年にはアピシット内閣発足に関わる問題、2014年には当時のインラック政権に対して判決を下したことがある。今回の件が政権の安定に実質的な影響を与えるかどうかは、審理の進展と最終判断次第だ。
裁判所の審理が続く間は、再選後のアヌティン政権にとって「いつ判決が出るか分からない」という不確実性が続く。憲法裁の結論次第では、投票結果が無効と判断される可能性もゼロではなく、政治的な緊張が続く局面となっている。タイ政界では連立政権の枠組みが複雑に絡み合っており、首相の立場が揺らぐことは内閣全体の運営にも影響する。
タイの選挙制度や投票方式をめぐる憲法上の争いは今に始まった話ではない。2023年の総選挙後にも選挙制度の合憲性をめぐる裁判が続いており、民主的手続きの透明性と憲法解釈の問題が政治の安定を左右するパターンが繰り返されている。