タイ警察が暗号通貨ピラミッド詐欺「Forsage」の共同創設者オレナ・オブラムスカ(Olena Oblamska)容疑者を米国に引き渡したことが5月18日明らかになった。被害総額は3.4億ドル(約1兆1,000億バーツ・約510億円)規模で、世界数万人の投資家が損失を被ったとされる。オブラムスカ容疑者は2026年2月、プーケット市中心部の個人コンドミニアムでタイ・サイバー警察に逮捕され、5月上旬に米国へ送致された。オレゴン連邦裁判所での5月11日の初公判で、電気通信を介した不正行為共謀の罪状について無罪を主張している。タイの捜査機関がプーケットで国際暗号通貨詐欺の中心人物を確保していた事実が、世界の投資家保護の文脈で注目されている。
Forsageとは—2020年開始のPonzi仕組み
Forsageは2020年1月に運営開始した暗号通貨「投資プラットフォーム」だ。表向きは(a)Ethereumブロックチェーンのスマートコントラクト技術、(b)BNB Chain・Tronも対応、(c)分散型でハッキング不可能、を謳う革新的サービスとして宣伝された。
実態はクラシックなポンジ・スキーム(Ponzi scheme = 自転車操業の詐欺)だった。仕組みは次のとおり。
第1に、新規投資家からの入金を、(a)初期投資家への「利益還元」として自動転送、(b)残りを運営者が管理する口座に抽出、という形で再分配する。
第2に、ブロックチェーン上の「スマートコントラクト」と称することで、(c)技術的に詐欺ではない、(d)非中央集権で公平、(e)コードでの保証、というイメージを作る。
第3に、新規投資家が止まれば、(f)初期投資家への支払いが止まり、(g)後期投資家が大損する、(h)運営者が事業停止する、というポンジ崩壊が必ず起きる。
実際の被害分析では、(i)80%超の投資家が初期投資未満の返金、(j)過半数が何も戻らず、(k)被害総額3.4億ドル相当、という結果になった。
プーケットでの逮捕—2026年2月
オブラムスカ容疑者は2026年2月、プーケット市中心部の個人コンドミニアムでタイ・サイバー警察に逮捕された。
プーケットは長年、(a)国際的な暗号通貨投資家のリトリート地、(b)外国人による違法ビジネスのホットスポット、(c)タイ警察の国際捜査連携の重要拠点、として知られる。本事件のように、世界規模の詐欺事件の中心人物がプーケットで逮捕される事例は近年増加傾向にある。
2026年4月にはイスラエル人による違法旅行代理店摘発(Gmat Hospitality、Andaman Sunday)、5月にはパンガン島でイスラエル人コミュニティ4,000人に対する議員警告、と外国人による違法ビジネス・滞在問題が次々に表面化している。
5/11オレゴン連邦裁判所での初公判
オブラムスカ容疑者は2026年5月上旬に米国へ送致され、5月11日にオレゴン連邦裁判所で初公判が行われた。米国検察は次の罪状で起訴している。
電気通信による不正行為共謀罪(Conspiracy to Commit Wire Fraud):複数州・複数国にまたがる電子通信を介した詐欺の組織的実行に関与した罪。米国連邦法で最大20年の禁固刑が可能。
オブラムスカ容疑者は全ての罪状について「無罪」を主張している。
共犯3人は依然として逃亡中
Forsage事件には、オブラムスカ容疑者の他にロシア人共同創設者3人が関わっているとされ、いずれも依然として逃亡中だ。
- ウラジミール・オホトニコフ(Vladimir Okhotnikov)
- ミハイル・セルゲエフ(Mikhail Sergeev)
- セルゲイ・マスラコフ(Sergey Maslakov)
米国はインターポール赤色手配(Red Notice)を発行しており、世界の警察機関と連携して追跡中。タイのサイバー警察も、共犯者がタイ国内に潜伏している可能性を視野に捜査を継続している。
タイの国際暗号通貨犯罪取り締まり強化
タイは2025年以降、暗号通貨関連の国際犯罪取り締まりを段階的に強化している。代表的な動きは次のとおり。
第1に、サイバー警察(PCT = Police Cybercrime Department)の体制拡充。
第2に、暗号通貨取引所(Bitkub、Satang Pro、Zipmex等)への規制強化と顧客本人確認(KYC)の徹底。
第3に、米国・FBI、欧州刑事警察機構(Europol)との連携強化。本事件はその成果の一例。
第4に、5月の DSI(特別捜査局)「Bitforge作戦」によるサムットサーコーン違法ビットコインマイニング工場(3,642台押収、被害5億バーツ)摘発。
タイは「ブロックチェーン・テクノロジーのハブ」と「国際暗号通貨犯罪の温床」という二面性を持つ国で、捜査機関の取り締まり強化は両面から進められている。
関連背景
タイ駐在員家庭の中で、暗号通貨投資に関心を持つ層は少なくない。本事件からの教訓は次のとおり。
第1に、「スマートコントラクト」「自動分配」「ブロックチェーンで保証」というキーワードに釣られる詐欺は世界共通。技術用語に惑わされず、(a)運営者の素性、(b)入出金履歴の透明性、(c)規制当局の認可、を確認。
第2に、タイでの暗号通貨投資は規制された取引所(タイSEC認可)を利用。Bitkub、Satang Pro、Zipmex、Upbit Thailand などが認可済。
第3に、本国(日本)の暗号通貨取引所での海外送金は、(d)タイの税法・国際送金規制、(e)在タイ駐在員の納税状況、(f)送金記録の保持、を慎重に管理。
第4に、被害に遭った場合の相談先:(g)タイ警察1155(観光警察、英語対応)、(h)サイバー警察(PCT)、(i)在タイ日本大使館02-696-3000、(j)タイSEC(証券取引委員会)。


