タイ北部チェンマイ県のサンカンペン郡が、養鶏大手CPF(チャロン・ポクパン・フーズ)と組んで「葉っぱ卵交換マーケット」を毎週開いている。乾燥した落ち葉2キロを持ってくると鶏卵1個と交換でき、住民1人最大10個まで受け取れる仕組みだ。野焼きを減らしてPM2.5を抑える狙いで、タイならではの地元密着型の取り組みとして注目されている。
葉っぱ2キロで卵1個、サンカンペン郡のPM2.5対策ユニーク企画
開催はサンカンペン郡庁舎前で毎週水曜日の午前9時30分から11時。住民は庭や畑から集めた乾燥した落ち葉を袋に入れて持参し、計量を経て鶏卵と交換してもらう。1人につき最大10個までという上限が設けられているのは、できるだけ多くの世帯が参加できるようにするため。タイの地方ではいまも草刈り後の野焼きが当たり前で、煙とPM2.5の発生源として問題視されてきたが、葉を「燃やさず売る」インセンティブを作ることで行動を変えようとしている。
CPFが週1,200個の卵提供、ブロワー2台寄贈で防火帯
CPFはこの取り組みに週1,200個の鶏卵を提供している。同社はタイ最大級の食肉・養鶏企業で、地方プログラムへの卵提供は社会貢献活動の定番メニューだ。あわせてブロワー機(送風機)を2台寄贈し、住民が落ち葉を集めるときの作業効率を上げるとともに、森林火災が起きた際に防火帯を作る装備としても活用されるという。集まった落ち葉は地域の堆肥として再利用され、農家の土壌改良にまわる。
チェンマイ知事の野焼き禁止政策、毎年3〜5月の煙害シーズン
サンカンペン郡の取り組みは、チェンマイ県知事が掲げる野焼き防止・PM2.5削減・森林火災予防政策の一環として位置づけられている。毎年3月から5月にかけてのチェンマイは、農家の野焼きと隣国ミャンマーやラオスからの越境煙害が重なり、世界の都市別大気汚染ランキングで常連のように上位に登場する。今期も州内の各郡で野焼き禁止令が出されているが、罰則だけでは住民の理解は広がりにくく、こうした「ご褒美型」の啓発が並行して進められている。
在チェンマイ日本人の生活にも直結、空気質悪化シーズンの工夫
チェンマイは日本人移住者・ロングステイの定番都市で、ニマンヘミン地区などには日系飲食店も並ぶ。一方で乾季のPM2.5は屋外活動の大敵で、空気清浄機を二重三重に動かして耐える駐在員家庭も少なくない。サンカンペン郡はチェンマイ市街から車で20分ほどの位置にあり、週末の温泉や陶器市で訪れる日本人も多い。地域住民が落ち葉を「燃やすゴミ」から「換金物」に変える発想は、日本にいる時にはなかなか触れない景色で、環境政策のローカライズ事例として一見の価値がある。