タイ東北部ムックダーハーン県のノック氏(仮名・24歳)が、生後5ヶ月から育児を委託していたヌン氏(仮名・29歳)に実娘を別の女児とすり替えられ、1歳半で発覚した後も実娘の行方が判明しないまま現在に至る事件で、2026年5月7日にチョンブリ県のバンランムン警察に正式な捜索要請を行った。同行支援したのは、子供と女性の権利保護を専門とするパウィーナ・ホンサクン財団議長のパウィーナ氏。事件は娘が3歳になった現在も解決の目処が立っていない。
5/7バンランムン警察に捜索要請
ノック氏とパウィーナ財団は2026年5月7日、チョンブリ県バンランムン警察署を訪問し、サラウット・ヌッチャナート署長(警視正)と面会。失踪している実娘(現在3歳)の捜索協力を正式に要請した。バンランムン警察が選ばれた背景には、加害者とみられるヌン氏の生活拠点や、すり替えられた事案発生地がチョンブリ県管轄区域に関連する可能性があると見られる。
パウィーナ・ホンサクン財団は、児童・女性虐待や人身売買事案で被害者支援を行うタイの代表的な民間団体。今回のように親が単独では警察を動かしにくいセンシティブな事案で、財団が同行することで捜査の優先度を引き上げる効果がある。
生後5ヶ月から育児委託、別の女児にすり替えられた経緯
事件の経緯は深刻だ。ノック氏は実娘がまだ生後5ヶ月の段階で、生活上の事情からヌン氏に育児を委託した。育児委託契約はタイの地方では正式な養子縁組ではなく、知人・親族関係を通じた口約束ベースで行われることが多い形態。
ヌン氏が娘を返したのは1歳半時点だったが、その時点でノック氏は返却された乳児が自分の実娘ではないことに気付いた。違いを判断する手がかりは身体的特徴(顔つき、出生時のあざ、発育パターンなど)で、母親としての直感が大きく働いたと推察される。
ヌン氏は別の女児を「ノック氏の実娘」として返却していた。すり替えの動機は明らかにされていないが、人身売買、養子の偽装、またはヌン氏自身の家庭事情(別の女児を保護する必要があった等)の可能性が捜査対象となる。
1歳半で気付いた母の苦悩、パウィーナ財団が支援
返却された女児が実娘ではないと知った時点で、ノック氏の人生は大きく変わった。まず実娘の行方が分からない状況での養育義務、すり替えで返された女児の処遇、ヌン氏との関係の精算、警察への相談、すべてが重なる過酷な状況に陥った。
地方在住の若い母親が単独で対応できる事案ではなく、最終的にパウィーナ・ホンサクン財団に相談する形となった。財団は事案の重大性を確認した上で、警察への正式要請に踏み切った。実娘が現在3歳ということは、すり替えから1年半以上が経過しており、捜索は地理的範囲・人的ネットワークの双方で困難を伴う。
タイの育児委託文化と今回の事件の異様さ
タイでは経済的事情・出稼ぎ・若年妊娠などの背景で、乳幼児を親族・知人に育児委託する文化が地方に広く存在する。多くは善意の互助関係で機能するが、契約書面が存在しない口約束ベースのため、今回のような事案でも法的立場が曖昧になりがちな構造を抱える。
加害者ヌン氏のすり替え行為は、刑法上は児童連れ去り・人身売買・身分詐称などの複数罪状に該当しうる重大事案。返却された別の女児の処遇も、児童保護法の枠組みで適切な養育者の特定が必要となる。捜査の進展次第では、ヌン氏の周辺で同様のすり替え事案がさらに発覚する可能性も否定できない。