ウドンターニー県のがん専門公立病院に勤務していた元財務・会計担当の女性が、在職中の5年間に54回にわたって架空の支払い申請を行い、合計約2,300万バーツ(約1億1,500万円)を横領した疑いで逮捕された。逃亡中はウッタラディット県で揚げ豚の屋台(ก้าหมูทอด)を営んで身元を隠していた。
事件の概要
反汚職行為委員会(PACC)東北部第4区の捜査によると、元職員(女性)は在職期間中、患者や業者への支払いを装って院内の会計システムから繰り返し不正入金を行っていた。病院の内部監査で不審な資金の動きが発覚し、捜査が始まった。
2026年4月6日午後、逃亡先のウッタラディット県で発見・逮捕された。容疑者は逃走後に揚げ豚の屋台を開業し、外見上は普通の商売人として生活していたという。
横領した資金の使途
捜査では、横領した資金の多くがラオス・ビエンチャン近辺でのギャンブルに使われた可能性が高いとされた。タイとラオスはメコン川を隔てて隣接しており、ラオス側の国境の町には大規模なカジノが複数ある。タイでカジノは違法のため、一部のタイ人が国境を越えてギャンブルをする実態がある。
カジノでの損失を穴埋めするために公金を横領し、さらに大きな損失を出すという「のめり込み型横領」はタイでも日本でも繰り返し起きるパターンだ。
病院会計管理の問題
今回の事件は病院の内部統制(内部監査)の不十分さも浮き彫りにした。5年間・54回にわたる不正が見落とされた背景には、複数名による確認手続きの形骸化や、電子承認の監査ログが適切に検証されていなかったことがあるとみられる。
タイの公立病院は予算不足で経営が厳しく、職員の給与水準が低い。こうした環境が横領の遠因となるケースも指摘される。
タイの医療機関横領事件の傾向
PACC(汚職防止委員会)のデータによると、タイの公的機関での横領事件は年間数百件が立件されており、医療・教育機関での事案が多い。
今回の2,300万バーツは1件の医療機関横領としては大きな額だが、過去には数億バーツ規模の横領事件も確認されており、システム的な透明化が課題だ。
