サムットプラカーン県バーンプリー郡でヤーバー(覚せい剤)の所持・販売疑いで捜索令状が出ていた42歳のチャノン氏は、2026年3月27日の捜索中、家宅捜索が始まると仏陀・法・僧侶の名を唱えるタイ語呪文を大声で唱え続けた。「仏陀の力で警官の目を封じてもらえば、薬が見つからない」という考えだったとみられる。警察がそれでも家中を徹底捜索した結果、アイスメタンフェタミン(ヤーアイス)5袋・計6.04グラムとヤーバー26錠が発見された。
逮捕時に立ち会ったチャノン氏の知人のティーラポン氏(55歳)も拘束された。2人ともその場で麻薬所持・販売の容疑で送致された。
SNSでは「呪文で警察を誤魔化せると本気で思っていたのか」というコメントが殺到し、一瞬でバズった。「迷信・呪術信仰が現実の法執行に勝てる」と信じている人々の存在が、ユーモアと悲しみを混ぜた形で拡散した。
タイでは呪術師(หมอผี・モーピー)の助言に従い、お守り・呪文・儀式によって犯罪捜査を免れようとする試みは農村部・都市部を問わず繰り返し報告されている。麻薬摘発の現場でお守りを大量に所持していた容疑者、占い師に「今日は捕まらない日」と言われて安心していた容疑者など、法執行官の間では「呪術系案件」は珍しくない。
タイ仏教の素地にアニミズム的信仰が重なったこうした呪術信仰は、農村部だけでなく都市部の低所得層にも根強い。公教育では科学的・合理的な思考が教えられているが、現実の判断には呪術信仰が割り込んでくることがある。法的・合理的なセーフガードよりも呪術に頼る心理の背景には、司法制度への不信感もある可能性が指摘されている。