タイ最大手銀行グループのSCBX(サイアム商業銀行の持株会社)が、バーチャルバンク事業参入に向けた子会社「BankX(แบงก์เอกซ์)」の設立をタイ証券取引所に届け出た。設立時の資本金は1万バーツと最小限だが、ライセンス取得後に5,000億バーツ規模への増資を計画しているとされる。KakaoBank(韓国)とWeBank(中国)という2社のデジタルバンクとの提携も発表された。
バーチャルバンクとは、実店舗を持たずにオンラインのみで銀行サービスを提供する新業態の銀行だ。タイ中央銀行(BOT)は2024年にバーチャルバンクの免許制度を整備し、2025年から本格的な審査を開始している。複数の企業グループが申請の準備を進めており、SCBXはその有力候補の一つだ。
KakaoBank(カカオバンク)は韓国最大のメッセンジャーアプリKakaoTalkを母体とする純粋デジタル銀行で、設立5年で顧客数1,500万人を突破した実績を持つ。WeBankは中国テンセント傘下のデジタルバンクで、アジアのデジタル金融で最先端を走る。この2社がSCBXと組む意味は技術・ノウハウの移転にあり、BankXはアジアトップクラスのデジタル金融知見をベースに構築される見込みだ。
SCBXは以前ベトナムのHome Creditの買収を目指していたが、計画は中止となった。バーチャルバンクへの参入は、海外進出に代わる成長戦略の転換点といえる。タイではGrabやLINE、AIS(タイ最大の通信キャリア)なども免許申請を検討しているとされており、競争は激しい。
タイのスマートフォン普及率は85%を超えており、銀行口座を持たない農村部の住民や若年層をターゲットにした低コスト金融サービスへの需要は大きい。バーチャルバンクが解禁されれば、従来の銀行では採算が取れなかった小口融資や少額決済の市場が開く。タイの金融包摂(フィナンシャル・インクルージョン)を一気に進める可能性がある。