タイ政府は国民1人あたり1万バーツ(約3.4万円)のデジタル通貨を配布する大型経済刺激策の実施日程を発表した。総額は約140億ドル(約4700億バーツ)規模で、世界最大級のデジタル通貨配布プログラムとなる。
「デジタルウォレット」と名付けられたこの政策は、セター前首相時代に構想された。ブロックチェーン技術を使い、配布されたデジタル通貨には使用期限(6カ月)と地域制限(居住地域の商店のみ)が設けられる。大型店やオンラインショップでは使えない仕組みで、地方の中小商店への消費誘導が狙いだ。
日本でも2020年に全国民に10万円の特別定額給付金が配布されたが、現金振込だった。タイのデジタルウォレットは使途と地域を制限することで、貯蓄に回されるリスクを防ぐ設計だ。この違いは経済刺激策としての効果に直結する。
ただし財源の確保が課題だ。当初は国債発行で賄う案だったが、財政規律を懸念する声が強く、段階的な配布に変更された。イラン戦争による経済の減速で税収が落ち込む中、大型財政出動の是非が問われている。
この規模のデジタル通貨配布は世界的にも前例がない。成功すれば途上国の経済政策のモデルケースとなるが、システムの不具合や詐欺のリスクも指摘されている。