タイ南部の島コ・パンガンで、英国人の男がバイクでタイ人医師をはねて逃走し、その医師が死亡した事件で、男の保釈が取り消され、再び収監された。当初の容疑に過失致死罪が加わり、罪状が大きく広がっている。
コ・パンガンでひき逃げ、著名な医師が死亡
再逮捕されたのは、ツアーボート事業を営む51歳の英国人ダンカン・ウィルコック容疑者である。事件が起きたのは5月23日の夜、コ・パンガン島のパンガン病院とトンサラを結ぶ道路上だった。男のバイクにはねられたのは、マヒドン大学ラマティボディ病院の医学部准教授で、呼吸器・集中治療を専門とするティラサック医師(通称ドクター・トン)。医師は深刻な頭部の損傷を負い、2週間以上の治療の末、6月1日に亡くなった。マヒドン大学ラマティボディはタイを代表する医療機関の一つで、第一線の医師の死は医療界にも衝撃を与えた。
当初の7容疑から致死罪へ、コカインも
男には当初、重傷を負わせる無謀運転、現場からの逃走、無免許運転、負傷者を助けなかった義務違反、自動車税の未納、保険未加入、そしてコカインの使用という7つの容疑がかけられていた。医師の死亡を受けて、容疑は過失致死を伴う無謀運転へと引き上げられた。さらに、虚偽申告や外国人による観光事業の規制違反など、4つの容疑も追加されたとされる。
医師の死で保釈取消、コ・サムイ刑務所へ
男は5月26日にいったん保釈されていた。12日ごとの出頭と、タイからの出国禁止を条件とするものだった。しかし医師が亡くなったことで、6月8日午後、裁判所が保釈を取り消し、男はそのままコ・サムイの刑務所へ送られた。コ・パンガンは満月パーティーで知られる観光の島で、外国人が関わるトラブルや事故も少なくない。著名な医師が外国人の運転で命を落としたことに、タイ社会の関心は高い。
名義貸し疑惑も浮上
捜査では、男が関わるツアーボート会社「リーフ・チャーター」をめぐる名義貸しの疑いも調べられている。同社の株式は、男が49%、タイ人が51%を保有する形だが、このタイ人は名義を貸しただけで実際の経営には関与していなかったとみられている。タイでは、外国人がタイ人の名義を使って事業を営む「ナミニー」が各地で問題となっており、今回の件も、5月23日に始まった大規模な名義貸しの摘発と関連づけて調べられている。一つのひき逃げが、観光地に潜む外国人事業の影をも浮かび上がらせた形である。