タイから英国やヨーロッパへ大麻を密輸する事件が後を絶たない。タイの空港では2026年1月からの5カ月間で、135人もの密輸の運び屋が摘発された。事態を重く見た英国とタイが、共同で取り締まりを強化している。
5カ月で135人、運び屋に英国籍が目立つ
タイ警察によると、摘発の舞台となったのは、スワンナプーム、ドンムアン、プーケット、チェンマイ、コサムイの各空港である。2026年1月から5月までに135人が摘発され、このうち英国向けのルートは68件、運び屋には51人の英国籍が含まれていた。タイで安く手に入る大麻を、価格の高い英国や欧州へ運んで利ざやを得る構図が浮かび上がっている。
1人で約50回往復、空港を分散して密輸
摘発された中には、繰り返し密輸を試みる常習者もいた。ある人物は、英国との間を約50回も往復していたとされる。運び屋は、ダブリンやアムステルダム、シンガポールのチャンギ空港などを経由し、複数の空港を使い分けて当局の目をかわそうとしていた。背景には、税関法のもとで罰金を払えば刑事事件が終結し、他の機関がその情報にアクセスできなくなるという「抜け穴」も指摘されている。
英国とタイが連携、86人を入国禁止に
英国大使館の関係者とタイ警察の幹部が会談し、対策を協議した。これまでに86人が入国禁止リストに登録され、うち35人が英国籍だという。両国はデータベースの共有を始め、出入国の監視や空港での警戒を強化している。会談には、英国のデイビッド・トマス副大使や英内務省のサム・ブリモア氏、タイ警察のニランドン副長官らが出席した。
大麻の「供給地」となったタイ
タイは2022年に大麻を事実上解禁し、東南アジアで突出して入手しやすい国となった。その結果、観光客らがタイで大麻を仕入れ、規制の厳しい英国や欧州へ持ち出す事例が相次いでいる。タイで合法的に買える大麻が英国では高値で取引されるため、運び屋を使った密輸が「割の良い商売」になっているとされる。スーツケースに大量の乾燥大麻を詰める手口が多く、若い旅行者がSNSなどを通じて運び屋に勧誘される例も報じられている。
英国をはじめ欧州の多くの国では、大麻の密輸に重い刑罰が科され、摘発されれば長期の収監につながる。タイ国内でも近年は大麻の再規制が議論されており、観光や健康への影響に加え、越境密輸の「供給地」になっている問題が、規制強化を求める声を後押ししている。